在りし日のむっちゃん
「この子にしようか」ネットの里親募集サイトを見て、姫路の施設に。「この子です」と、出てきた犬は画像と違う折れた耳。「あぁ、息子の方と画像が入れ替わってますね…」
「いくらダイエットしても効果が無いので、横綱の武蔵丸と呼んでいます」
「若い飼い主さんが、アパートの大家さんに内緒で、数頭の大型犬を飼育していて、退去か処分を迫られてうちで保護しました」
「お利口さんで、シャンプーも嫌がりません」まぁこの一言だけは大嘘でしたが、若い子はまだもらい手が有ると思うけど、大きな雑種で年かさだと、もらい手が付きにくいだろうと言うかぁちゃんの意見で、我が家にやってきたむっちゃん。
我が家に迎えてすぐの節分、厄除けの鰯を食べて下痢。春になって暗黒大魔王くーちゃんとの同居。そして東日大本震災。
新風館のペットイベントに出かけ、くーちゃんがトリミングされるのを見て、次は我が身と悟ったむっちゃん、首輪すっぽ抜けの大脱走。はじめて行った新風館から、車にひかれることも無く、格子戸の前で賢くお座りして、追っかけて帰ったかぁちゃんをお出迎え。
前の飼い主さんがYAMAHAのTWかな?短気筒にスパトラのバババ系バイクやスケボー、キックボード愛用していたみたいで、それ系の走行音を聞くと「僕だよ、僕はここにいるよ、ワンワン」とアピール…細い階段で二階に一直線で上がるタイプの建物に接すると、懐かしそうに上の様子をうかがってみたり…とにかく記憶力に優れていました。。。
歴代のお利口さん度で言えば、初代ぱる兄さんが繊細さを併せ持つ竹中半兵衛タイプで、むっちゃんは播州鉄血の黒田官兵衛タイプ。姫路セントラルパークのそばにあった、今は亡きペット保護団体から譲渡されたからかな。
くーちゃんを見送って、息子のジュニアを見送って、おつうとの同居。穏やかな日々が続いていましたが、2年前から足腰弱って、ドッグフードも受付なくなって、昨年今頃「年内持たない」との余命宣告。
で、26日金曜未明。
私が市場に出勤して留守の間、縁側から滑落。
34kgを誇った体重も、二年の闘病生活で19kg弱まで減。
筋肉脂肪といった防護壁クッション緩衝剤は皆無。
庭石、コンクリ、砂利の衝撃が、骨や神経、脳にダメージを加えた模様。
当日夕刻、それまで嫌々ながら、不承不承飲み込んでいた、玉葱お手製の流動食を受け付けない。
それでも水に関しては自力で飲んでくれました。
27日土曜日食事は受け付けず、水はかろうじて。
かぁちゃんが市販の犬用流動食をシリンジで与えると、ちょっと一口二口飲み込んでくれたそうな。
28日日曜日、水もシリンジで少しだけ。流動食ものどを鳴らしてくれない。
29日に日付が変わってすぐ。むっちゃんの呼吸が荒い。目の輝きが…
市場作業の合間に、「今日明日が山場」とかぁちゃんにメール。
帰宅後…前庭疾患の時のように、右に、上に頭をねじり、目を見開いて虚空をにらみつけるむっちゃん。
時折激しい痙攣。シリンジで口を濡らして、手でまぶたを閉じ、眉間、耳元、頭首体をさすったり、マッサージすると、少し落ち着くのか目を閉じて寝息を立てる。。。それもつかの間ですが…何度でも、無駄でも、繰り返すしか手の施しようが無い。
おつうの散歩がてら、堀川ペットに立ち寄り経過説明。
「延命措置は執らずに、穏やかに看取ります」
明日に備えて寝床に入って…7時半。
「もう危ない」とかぁちゃんが起こしてくれた。
間欠的な、荒い息。
その間隔が徐々に長く、遠くなり…
むっちゃん、もう痛くないよね。
つらくないよね。
最後までよく頑張った。
男らしい犬だった。